演出陣からキャスト陣へ、キラーパスを出していきたい
総合プロデューサー・鈴村健一&
クリエイティブプロデューサー・森久保祥太郎
総合プロデューサー・鈴村健一&
クリエイティブプロデューサー・
森久保祥太郎
による公演直後の振り返り対談
※9月7日公演本編のネタバレを一部含みます。ご注意ください。
いよいよ開幕した『AD-LIVE ZERO』。初日を飾ったのは梶裕貴&前野智昭ペアだ。
昼公演は【女しかいない世界】で出会った【オサム(梶)】と【レイ(前野)】が織り成す【トラップだらけの物語】。夜公演は【地図に無いBar】で、【カンゾウ(前野)】と【本当の忍者になる】ためにやってきた【テラダタマシイ(梶)】が【一冊の本を巡るストーリー】を展開する。
くじ引きで決定したこれらの設定のほかにも、それぞれが抱えるプライバシー、オチとなる行動、演出チームに課された15の演出など、舞台上で消化すべき要素が数多くあるうえ、アドリブワードも飛び出す前代未聞の即興劇。
舞台上の二人だけでなく、彩-LIVEとして舞台に出て行く演出陣やスタッフも一丸となって臨まなければ成立しない舞台、それが『AD-LIVE ZERO』である。初日を終えたばかりの総合プロデューサー・鈴村健一&クリエイティブプロデューサー・森久保祥太郎に感触を聞いた。
取材・文/とみたまい
演出側も「まさに戦場」。『AD-LIVE ZERO』の怖さとは?
演出側も「まさに戦場」。
『AD-LIVE ZERO』の怖さとは?
──『AD-LIVE ZERO』がいよいよ開幕しました。初日を終えた直後の率直な感想は?
鈴村: すごく疲れるっていうことがわかりました(笑)。疲労度は過去最高かなあ?
森久保: 演出側としても、いろんな想定をしながら、ずっと頭が回り続けている感じですよね。
鈴村: 昨年の『AD-LIVE 2018』もかなり大変な企画でしたが、今年は演出側もよりアクティブに出て行かないといけないので……「出演する・ストーリーを考える・ステージに立っているキャストが何を考えているかを読み解く」っていう、3つの軸が同時に動く、劇的に疲れる仕組みになっています。自分で企画しましたが、今日やってみて「すごい大変」ってことがわかりました(笑)。
森久保: ははは! 段取りできるものが何ひとつないから、舞台の上で起こることを聞き逃せないもんね。
鈴村: “彩-LIVE(いろどりぶ=舞台の途中に登場するゲストキャスト)”として舞台に出て行くために着替えているあいだも、「いま、舞台上ではシナリオがどう進んでいるんだろう?」って耳で聞いているから。戦場だよね(笑)。
森久保: はたから見たら殺伐としているんじゃないかな? メイクさんに「ほうれい線描いて! ほうれい線!」って言いながら(笑)。
鈴村: ははは! これまでの『AD-LIVE』でやってきた“完全にセイフティーな舞台”ではなく、今回はキャラクターや演出もすべてくじ引きで決めるので、どう転がるかわからないという不安は間違いなくありましたが、さすがは梶くんと前野くん。いろいろとやってくれて、すごいなあと思いましたね。初日としても、すごく手応えがあったと思います。
──今日の初日(※取材は9月7日)を、どのような気持ちで迎えましたか?
鈴村: 僕は2割の不安と8割の確信ですね。検証もたくさんやって、そのたびに何かしらのドラマが生まれて面白かったので「梶くんと前野くんなら大丈夫だろう」と。でも、今朝いちばんで会ったときの前野くんが、見たことのないぐらい不安な顔をしていて。「ちょっと後悔しています、帰りたいです」って言ってきたんです。それに感化されたのか、梶くんも「ちょっと今回の『AD-LIVE ZERO』難しくないですか?」って(笑)。
それでも、いざリハーサルをやったら、すごく彼ららしい驚異的なシナリオになったので、「これぞ『AD-LIVE』だな」って思いましたね。やっぱり今回も、リハーサルがすごい面白かったです(笑)。
森久保: 僕は想定できることは準備して持って行きたいタイプなんですが、今回は本当に丸腰の手ぶらで来たんですね。こんなことは初めてでしたが、リハーサルで「あ、こういう感じでいけるんだな」って不安もなくなって……でも、昼公演で『AD-LIVE ZERO』の怖さを思い知ることになりました(笑)。
──アフタートークでもおっしゃっていた「設定の聞き逃し」ですね。
森久保: ステージに出て行こうと準備していたときに、持っていた小道具を変えようと思って、スタッフさんにお願いしているあいだに……新たなキーワードと、新たな展開が舞台上では生まれていて。それを僕、完全に聞けていなかったんです。
──梶さんが発した「クイーン」という、ドラマのなかでも重要なワードでした。
森久保: それを聞き逃したままステージに出たら……まったく聞いたことがない「クイーン」っていう言葉がずっとインカムで入るんですね。
鈴村: ははは!
森久保: 「どういうことになっちゃったんだ?」と。僕は僕なりに、ステージに飛び込んで成し遂げたかった仕事がいくつかあって。それをやって引き上げようと思っていたら、クイーンがどうとかってインカムから聞こえてきたので、それをそのままセリフとして言っていたんですよ。「俺は何を言っているんだ!?」って思いながら(笑)。
鈴村: ははは! そうだよね。
──ちょっと噛んでいましたもんね(笑)。
森久保: そう!(笑)そりゃあ噛みますよ。そのことについて、また梶くんと前野くんがガンガン突っ込んでくるから、もう……インカムも、ステージ上の二人も何を言っているのかわからなくて(笑)。しまいには「クイーンって何?」って聞いちゃいましたよね。本当は僕、ハードボイルドで攻めようと思ったんですよ。レジスタンスっぽい感じで出て行って、彼らをうまくリードできればと思って。でもそのクイーンの一件でキャラが崩れて、一瞬でポンコツ野郎になっちゃったわけですよ(笑)。
鈴村: ははははは! 祥ちゃんが聞き逃していたことも、僕らはわからなかったんです。だから、フォローもできないんですよね。それで「はい!『俺はクイーンを守りし者』って言って!」って。でも祥ちゃんは「クイーンを守りし者」って言いながらも、「誰それ?」みたいな(笑)。
森久保: そうそう(笑)。小道具をトンファーから銃に変えた一瞬のあいだに「何が起きたの?」って。これが今回怖いところだと思いましたね。聞き逃しについては、今後も気をつけようと思います。
鈴村: 次からは「何か変わった設定は生まれていませんか?」って確認をしてから舞台に出ることを心がけるしかないね。
森久保: 僕もちょっと焦っちゃったんですよね。「役目を果たそう」と思って舞台に出て行ったのに、それができなかったことで焦りが出てしまって。だから、夜公演ではそういったことがないように、できるだけ自然なカタチでステージに上がれる立場を取ろうと思いました。
夜はバーという設定だったので、ドラマの起伏にまったく関係なく出入りできる立場として、バーの店員がいいんじゃないかと思ったんです。何かあったら絡むことができますし、何もなければただの店員として居られるので。「こういうアプローチでいいんだな」と。昼公演で学んだからこその、夜公演でしたね。
「人がいないかもしれないところにパスを出すような感じ」
の演出になる
「人がいないかもしれないところにパスを出すような感じ」
の演出になる
──公演2時間前にお二人も立ち会って、梶さんと前野さんがくじを引いたとのことですが、その場ではもちろん打ち合わせはできないんですよね?
鈴村: そうですね。「なるほど。なんかストーリーが見えそうだよね」みたいな探り合いはしていましたが、打ち合わせはしていません。でも、実は僕、「くじ引きの際に打ち合わせをしてはいけません」とは言ってないんです。
くじ引きは10分で行なうと決めているんですが、だいたい7分くらいで引き終わるんですね。だから、残った3分で打ち合わせをしてもいいと僕は思っているんですが、僕からけしかけるのも野暮なので、あえて言わなかったんです。でも今後、そのタイミングで打ち合わせをするペアも出てくるかもしれないので(笑)楽しみですね。
──演出側のみなさんは、15個引いた“演出くじ”を持ち帰って、2時間のあいだで打ち合わせと準備をするのでしょうか?
鈴村: そうですね。キャラクターくじを検証して、「この人たちならこういうことをやってくるでしょうね」とか。今日の夜公演も、梶くんが演じるタマシイの目的に【本当の忍者になるために】というのがあって、かつ、全体としては【一冊の本を巡るストーリー】という設定だったので、「たぶん忍術書が出るでしょうね」って想定していたんです。それで「忍術書を作りますか」って。でも、ちょっとミスリードしたいねっていうことで、バーの店員として出て行く祥ちゃんが巻物を持っていて、忍術書だと思って開けたらバーのメニューだった、みたいな(笑)。そういう遊びを入れておきましょうって、先回りをしている感じですね。そこの作業までは楽しいんですよ(笑)。でも、舞台が実際に動き出すと、そうやって先回りしてアドバンテージを持っていたものが、どんどん追いつかれて無くなっていく……。
森久保: そうなんだよね! 事前想定はある程度仕込んでおいたほうがいいかなと僕も思っていて。くじ引きが終わった時点で、「自分はどういう立場で、どうやって舞台に出られるかな?」っていくつか想定しておく。例えば、バーっていう設定だったら、バーテンやマスター、バーの客とかを想定できるから、それぞれの衣装を考えておくんですね。それで、川尻さんや鈴が考えていることに照らし合わせて、「それだったら俺、バーテンで出られるよ」とか「いま俺マスターになったから、ひとつふたつ、演出カードをこなせるよ?」みたいな感じだよね。
鈴村: いまはまだ始まったばかりですから、ここからさらに僕たちの密度が上がっていくんじゃないかっていう感じはあるね。
森久保: そうね。演出陣はもっと怒号が飛ぶぐらいテンションを上げてもいいと思う。じゃないと、先回りできないから。
──舞台上と舞台裏、どちらも『AD-LIVE ZERO』をやっている、みたいな感じでしょうか?
鈴村: そうなんですよ! 本当にそんな感じなんです。
──その表と裏の接点がかみ合ったり、かみ合わなかったりするわけですね。例えば昼公演の【トイレに行きたくなる】という演出カードですが、演出側としてはその時間を使って物語を展開してほしかったけれど、トイレに行ったレイ(前野さんのキャラクター)が思った以上に早く戻ってきてしまいました。一方、夜公演では「もっと早く忍術書がほしかった」というキャスト側の思いがありました。そのかみ合わないところも含めて面白いと感じました。
鈴村: そうそう。そこがまた面白いところなんですよね。これまでの『AD-LIVE』はキャストに任せることのほうが割合としては大きくて、「なるほど、そうやって動かすんだね」って見守るのが演出の仕事だったんです。でも『AD-LIVE ZERO』は、演出側もくじをどんどん消化していかないといけないので、見守っている時間がないんです。もう、賭けというか、「これを出したら、きっと何かが起こるよ」みたいな、人がいないかもしれないところにパスを出すような感じがあって(笑)。それが実はキラーパスだった、みたいなことを期待している感じですよね。
──キャストからしたら、「ここに走ったんだから、パスちょうだいよ」みたいな局面もあるんでしょうね。
鈴村: そうですね。ドラマをどう展開していくかっていう想定は彼らにもあると思います。でも、それって……演出側がもっと胸を張って、主導権を握っていいのかなっていう気がしました。というのも、即興って、何かをやったら次のことが生まれるんですよね。何もしない時間が長いよりも、何かを起こしたほうが次につながるので、今後は僕らもその部分をより深く理解しながら、どんどんやっていったほうがいいかなと思いました。演出陣からキャスト陣に、キラーパスを出していけるような舞台にしていきたいです。
演劇的な視点から絶妙な判断ができる、川尻恵太の度胸
演劇的な視点から絶妙な判断ができる、
川尻恵太の度胸
──昼公演の物語の展開について、印象的なことはありましたか?
鈴村: 昼公演はやっぱり……梶くんが「僕が本当の●●●です」って言い出したシーンですね。
森久保: あのとき僕、何かしらの役割を持って舞台に入っていこうと思って、舞台裏でスタンバっていたんですよ。そしたらそのくだりが始まったので「これはちょっと様子をみよう。彼らに任せよう」と。梶くんの長台詞も見事でしたね。
鈴村: あれは先ほど言ったパスでいうと、見事にキラーパスとなった瞬間なんですよ。というのも、実はあの展開って、梶くん自身は想定していなかったと思うんです。すでに梶くんは正体を明かしていましたが、僕らの手元には【正体を告白する】っていう……30分経って追加された3つの演出カードのうちのひとつがあったんですね。それで、梶くんにその演出を指示して……。
──正体をすべて喋っていた梶さんに、さらに【正体を告白する】というパスを送ったわけですね(笑)。
鈴村: そうそう(笑)。それで「何か言わなきゃいけない」って思った梶くんが言ったのが「僕が本当の●●●です」というセリフで……たぶん苦し紛れだったと思うんですが、ああいうときこそ面白いものが出てくるんだなと思いましたし、見事にドラマをうねらせるセリフでしたね。普通はあんなことできないですから、あれは梶くんの才能だと思います。本当にすごいなあと思いました。
──夜公演の物語の展開について、印象的だったことはありますか?
森久保: くじで引いたオチが【●●と言う】でしたが、「それを誰に言わせるんだ?」ってなって……死神として出て行った鈴に対して、前野くんがいい感じで空気を作ってくれたんですよね。それで「これ、死神が『●●』って言って終わったらどうなるんだろう?」って(笑)。
鈴村: ははは! 俺もねえ、言う直前までいった。だって、一番キレイなんだもん(笑)。「でも、いいのか俺!?」って思ってね。
森久保: 裏で「死神じゃない二人のどっちに言わせる?」って、川尻(恵太=演出担当)さんと相談していて。川尻さんが「舞台に立っている人たちに委ねましょう」って言ったんですね。それで舞台上には「オチの『●●』をお願いします」っていう指示しか出さなかったんです。「誰が言うかな?」って思っていたら、前野くんがうまく引き取って落としてくれたのがよかったですね。ああいう「委ねましょう」はいいよね。
鈴村: ドキドキするよね。
森久保: ああいうときの川尻さんの演出度胸って、やっぱりすごいなあって思った。
鈴村: すごいんだよね。俺だったら、「何としてでも、前野くんに言わせる」とか思っちゃうもんね。
森久保: そうそう。指示しちゃう。でも、ちゃんと最後にみんなが揃ったところで前野くんがまとめてくれて、いい絵になったと思うし。そういう意味でも、あのタイミングで川尻さんが「委ねる」っていうのを選択したのはすごい良かったなと思います。川尻さんのそういった決断が、これからも頼りになるよね。
鈴村: あれって本当にすごくて……演劇的決断なんだよね。「何が起こるかわからないのが『AD-LIVE』なんだから、ここは委ねたほうがいい」っていうことがわかっているんだよね。キャストが何とかしてくれるだろうし、舞台裏から見ていたらわからないけれど、舞台上ではこの展開に合うような何かが必ずあるはずだって信じている。それってすごい演劇的目線だと思うんですよね。
──それを拾った梶さんと前野さんは、まさに初日に適したキャスティングだと思いました。
鈴村: おっしゃる通り、あの二人でよかったですよね。前野くんには「今回の企画は僕向いてないです」って、会うたびに言われていたんですけど(笑)。
森久保: すごい言ってたよね。僕も現場で会うたびに言われた(笑)。
鈴村: 「僕、準備するタイプなんで無理ですよ」ってずっと言ってたけど……そう言いつつも、前野くんって当日にガンガン作るタイプなんです。前回の公演のときも、その瞬間に生まれたことから妄想が急に広がって、スイッチが入るといつまでも喋っていられる人なんだっていうのがわかりましたし。一方、梶くんはもともとゼロからモノを作ることが好きなタイプなので、そういった二人が共同戦線を張っていけば無限に伸びるだろうと。プロデューサーとして偉そうなことを言うと……初日にはピッタリの、狙い通りのキャスティングでしたね(笑)。完璧でした。
森久保: リハーサルのときは二人でいろんなことを試していて、そこで得たことを昼公演では上手にかみ砕いて、きっちり仕上げてきているなという印象でした。夜公演ではそこからさらに上げてきていたので……僕も舞台に立つからわかるんですよね。終わった直後に手応えがどうだったか、なかなかわからないのが『AD-LIVE』という舞台なんですけど、そんななかでも今回、彼らはすごく手応えのある仕事をしてくれたなと思いますし、さすがだなと感じましたね。『AD-LIVE ZERO』とは一体何なのかということをお客様に知っていただくうえでも、うってつけのコンビだったんじゃないかと思います。あの二人だから「なるほど。今回はこういうことなのね」っていうのが、会場やライブ・ビューイングにお越しいただいたお客様に的確に伝わったんじゃないかと思います。
役者として「恐ろしいけれど、挑んでみたい」と思う
『AD-LIVE』という舞台
役者として「恐ろしいけれど、挑んでみたい」
と思う『AD-LIVE』という舞台
──改めて『AD-LIVE』とは、役者にとってどんな舞台だと感じましたか?
森久保: 僕らも普段“演じる”という仕事をしているなかで、「そもそも芝居って何なの?」みたいなことをつねに考えているんですよね。「“演じる”という意識があって演じたものは芝居じゃないのか?」とか「体験したことのないファンタジーを、リアルに表現するってどういうこと?」みたいな……矛盾があるような、本当のところは解明できないような作業を僕らはおそらく日常的にやっているんです。そういった意味で『AD-LIVE』は、芝居についていろんな角度から検証できる場というか、「さあ、役者として、このときあなたはどう動きますか?」って逐一試される場だと思うんです。だから……恐ろしいですね(笑)。恐ろしいけど、役者をやっていると「そこに挑んでみたい」と思ってしまう。そういう舞台だと思います。
──鈴村さんは今回、クリエイティブプロデューサーとして森久保さんが入られたことについて、どのような実感を持ちましたか?
鈴村: 「能動的な人なんだな」っていうことが改めてわかりました。いままでにないタイプの関わり方をしてくれるだろうっていうことは想像していましたし、森久保くんならば新風として刺激を与えてくれるだろうなとは思っていましたが、やっぱりその通りでした。 とくに面白いなと思ったのは……役者として長年この世界でやってきたという土台がきちんとあって、僕らの企画にしっかり寄り添ってくれつつも、自分で判断して行動してくれる。「俺はこういうことをやろうと思う」といった考えをしっかり持っているから、こちらから指示を細かく出さずとも……すでにバーのマスターの恰好になっていたりするんですね(笑)。
森久保: ははは!
鈴村: 「ここは忍者バーにしたほうがいいと思う」とかって、ちゃんと主張してくれる。それってすごくいいなと思いますし、面白いですよね。森久保くんをキャスティングした意味がある。ただの“人手”じゃなくて、新たな“頭脳”といいますか。そういうものが生まれてほしいと思ったので、クリエイティブプロデューサーという名前をつけて参加してもらいましたが、まさにその役割を果たしてくれているので、やっぱり来てもらってよかったなあって心底思っています。
森久保: でも、最初は「どこまでやっていいのかな?」っていうのはありましたね。僕のイメージとしては、鈴や川尻さんから言われたことを、ミッションとしてこなしていく役割でいようと思っていたんです。でもそれって、本当に大変なんですよ。ストーリーを考えながら、演出の打ち合わせをしながら、準備中に現場の動きも聞かないといけない。舞台へ出て行こうと動いた矢先に現場が先へ進んじゃって「あ~、乗り遅れた!」ってなるから……これはもう、ミッションをこなすだけじゃなくて、考える頭脳の数が多いほうがいいんじゃないかなと思って。夜公演では、自分が思ったことを言わせてもらいながら役割を果たしていきましたね。
鈴村: それがすごくよかったんです。面白いし、ちゃんと機能してた。
──ですが、次回の公演は吉野裕行さんと鈴村さんがメインキャストとして舞台に立ちますから、森久保さんはお一人での彩-LIVEとなります。
森久保: 川尻さんとがっちり組んで、いくつかの布石を置いて、攻めていってみようかなと思いますね。我慢するところは川尻さんに全部指示をもらって。僕にはない、川尻さんのセンスが光る部分だと思うので、とにかく委ねて、僕は僕で「いつでも行けまっせ」って、アイデアを持って準備していこうと思っています。今回で自分のやるべきことがわかった気がしたので、不安はないんですが……むしろ、自分を含めて演出サイドをもっと忙しくしたいなと思っています。
──そして、その次は仲村宗悟さんと舞台に立つわけですが……。
森久保: そっちなんですよね~。
鈴村: ははは! 俺もそっちなんだよね。「どうしよう?」って思っちゃう。
森久保: そうなのよ。だから今日も、梶くんと前野くんにいろいろ質問して、出演者側の気持ちをリサーチしたんですけど(笑)。「何をモチベーションに、舞台上での時間軸を過ごしていけばいいんだろう?」って、演出との絡みに対する心境とかも聞いて。参考になりましたね。
鈴村: 僕は次回、メインキャストとして出演しますが、演出と同じ気持ちでガンガンいったほうがいいんじゃないかと思っているんです。よっちんや演出にガンガン乗っかっていくだけじゃなく、設定を次から次へと持っていって、ドラマを作り出しちゃおうと思っているんです。というのも、今日やってみて、事を起こしたほうがいいかもしれないって思ったんですね。そうすると演出陣も「お、なんか起きたな。じゃあ、このカードが使えるんじゃない?」って反応できますから。何も起きない時間って、出演者側も演出側も、お互いに膠着してしまうので……何かが起きるために、何も起きない時間をちゃんと作る。メリハリをもって、できるだけ動く。何かが起きるようなことをばら撒き続ける。そういったことを意識してやってみようと思っています。それから、今日やってみてわかったのが「受け取った演出は、丁寧に対応したほうがいい」ということ。演出側が出してきたことには、必ず意味があるっていうのがわかったので……間違えて受け止める可能性もありますが(笑)、自分なりに考えて、演出をしっかり受け止めようと思っています。
──森久保さんと仲村さんの回の演出については?
鈴村: 祥ちゃんが演出にいない回をどうするかですよね。でも、そこまで来たら自分も舞台に立った後だから、ノウハウが溜まっているような気がするんです。たぶん、スピーディーに演出をガンガン入れていくっていうことをチャレンジするようになるんじゃないでしょうか。それで何が生まれるか、舞台上に立っているキャストに委ねるというのをやってみたいなと思っています。
──寺島拓篤さんと豊永利行さんの回まで、お二人で演出する機会はないんですよね。そしてその後はお二人も出演される徳島公演ですから。
鈴村: そうなんですよ。
森久保: そっかあ! じゃあ、一緒に演出するのはあと1回(昼公演&夜公演)ってことか。
鈴村: テラシーとトッシーが……僕らのスキルが上がって、ガンガン無茶ぶりを入れていく際の犠牲者になるってことですよね(笑)。
森久保: ははは! そうなるね(笑)。
──まだまだ続く『AD-LIVE ZERO』。ファンのみなさんにメッセージをお願いします!
森久保: 前代未聞の『AD-LIVE ZERO』という演目ですが、全公演、違う印象を抱くステージになると思います。みなさんから寄せられた“無茶ぶり”に(笑)ステージに立っているキャスト、そして僕らスタッフ一同が応えていきますので、引き続き楽しみにしていてください。
鈴村: 初日を終えてみて……自分で作っておいてなんですけど(笑)「こうなるんだ、面白いな」って思えたので、堂々と胸を張って『AD-LIVE ZERO』をやり遂げたいなと思っています。世界観もゼロから始まりますし、くじ引きの受け止め方も人によって全然違うというのが今日よくわかったので、これから出演してくれるキャストの個性が色濃く反映される舞台になるだろうなと、改めて感じました。みなさんの想像を超える舞台を作れるように、引き続き頑張っていきますので、楽しみにしていてください。ライブ・ビューイングもありますので、ぜひ観に来ていただければと思います。